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~第二話⑥~ 悠馬はなかなか発言できない

Penulis: 倉橋
last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-30 21:10:16

 インチキ投票でクラス委員を押しつけられた隣の席の遠山飛鳥を助けるため、勇気を振り絞ってさっそうと立ち上がったはずの朝井悠馬。

 だがさっそうと立ち上がることはなかった。

 勢いあまって、その場に腰を落とし、横倒しになって悲鳴をあげる悠馬。

 見よ! 陰キャラを通り越し、完全に「怖い人」と化していた。

 唖然とする生徒一同。

 飛鳥は音のする方に目を向ける。涙で曇った両目にも、なぜか隣で倒れている朝井悠馬の姿がハッキリと見えた。

「どうしたんです? 朝井くん」

 悠馬が机に手をかけて立ち上がろうとする。

 だがさっそうと立ち上がることはなかった。

 バランスが崩れ、今度は机と共に床に倒れて悲鳴をあげる悠馬。これはもう「怖い人」では済まされない。「アブナイ人」ではないか。

 クラスメイトの冷たい視線。

「どうしたの? 何があったの? 今はパフォーマンスの時間じゃないんだけれど」

 福島先生は茫然自失、どうしたらよいか分からず、パニックとなってうろたえている。

 そのときだった。飛鳥がそっと悠馬に手を差し出す。悠馬は何も考えずに飛鳥の手を握る。飛鳥に引っ張られて立ち上がる悠馬。

 悠馬は飛鳥の手を握ったままだということも忘れて、緊張した表情で話し始めた。

「先生」

 福島先生が何事かと不思議そうな顔をする。

「遠山さんがやりたくないなら僕がクラス委員やります」

 
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